70歳まで勤めそうな女性

労働と健康長寿には、明らかな相関関係がある。

昔、日本人のほとんどが農民だった時代は、当たり前だけど、定年なんかなかった。

そうせざるを得なかった、という事実もあったが、皆、死ぬまで働いていた。

爺さんが、土に鍬を入れていた時、シーンとなってしまったので、周囲が、「おーい爺さん」と声をかけたら、そのまんま死んでいたという話もあった。なんという理想的な死に方だろう。

それがいつからか、労働者の過半をサラリーマンが占めるようになってから、状況が変わった。

昭和の頃までは、定年が55歳だった、と聞くと、今ならギクッとしてしまう。

しかし、当時は男性の平均寿命が70歳ちょっとくらいだった。サラリーマンを辞めた後の余生はさほど長くなかったのだな。

 

先日、昔勤めていた会社の女子会に呼ばれた。友達の少ない私には、こういう場に呼んでもらえるのは、貴重なことこの上ない。

言うまでもないが、「女子」会と言っても、姥桜の会である。年齢が近い、現役、ないし、私のようなOGが集められた。

その会社は、現在、部署にもよるが、定年が「70歳」に定められているという。

70歳!

と言ってもまだ達成した人はいないそうだけど。

 

呼ばれた「女子」の中に、もう同じ部署にウン十年勤め続ける、レジェンドのような人が来ていた。

会社側から、度々、管理職に、と打診されても、

「私は部下の管理をするより、お客様の電話を取っていたいんです」

と言って固辞し続けている。

従って、彼女の上司となる人は、誰も彼女より年下ばかり。でも、ブレない彼女の姿勢は、素晴らしいことだと思う。

「彼女なら、女性初の70歳定年を達成するんじゃない?」

みんなでそう言い合ったし、彼女にも直接「是非達成して」と言ってみた。

しかし、当の彼女は、「いやいや、そんなそんな」と首を横に振るばかり。でも、できたら達成してほしいものだ。

 

健康と仕事は、鶏と卵だろうか。働いているから健康なのか、健康だから働けているのか。

ともあれ、昭和の頃には、女性社員、もとい、女子社員は25歳くらいで結婚退職するのが当たり前だった。

女性が長く勤めることは、全く想定されていなかった。

隔世の感がある。