発達性読み書き障害 (dyslexia)

子供のいない私なのに、この本はずっと前から興味があって、長期間待って、やっと図書館で借りることができた。

 

そういえば、小学校の頃、クラスに1人くらいは、なぜか、絶望的に読み書きの出来ない子がいた覚えがある。国語の時間に指名されても、全然音読できない子が。

 

 

 

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著者の千葉リョウコさんは漫画家で、この本は、監修の宇野先生との対談部分以外、漫画仕立てになっているので、実に読みやすい。

3児と、3日に1度くらいしか家に帰らない仕事中毒の夫を持ち、漫画家として母として主婦としても毎日奮闘する著者。しかし、長男が、小学校に行くようになっても、どうしても字が書けないことに、疑問と不安をいだく。IQは普通で、本を「読む」のは好きなのに、「書く」となると、まるでだめな長男。漢字書き取り1ページに1時間かかる。何度も勉強させても、漢字を忘れてしまう。教室の板書に時間を取り過ぎる。

いろいろ調べていくと、ついに、「発達性読み書き障害(dyslexia)」という先天性障害の存在にたどり着き、ついにその診断を受けた。怠けていたわけでも、勉強ができないわけでもなく、障害だったのだと判明したのが小学校6年生のとき。それからトレーニングを受け出し、ひらがなとカタカナが書けるようになったのが中学1年生。

 

表紙にもある通り、「父」という漢字を覚えさせるにも、「父のラはタボ」といった文章で覚える練習カードを沢山作った。が、それでも、いくら練習しても、忘れる字があるという。

 

字が書ける、って、誰でも当たり前に出来ることではなかったのだ。

 

海外の著名人では、トム・クルーズがこの障害を持っている。彼の場合は、この長男と違って、「読む」こともできず、映画の台本は、すべて誰かに読んでもらって覚えているのだそうだ。たった26個の文字しかないのに、それすら読めないのか、と驚く。その意味で、dyslexiaの研究が進んだ国に行って帰国した日本人学者が、実際に日本でこの障害についてリサーチしても、結果は、海外のものと違ってくるのだという。例えば、ADHDなどの研究結果は欧米から日本にそのまま輸入できるのに、ひらがなカタカナ漢字の3種を持つ日本では、それらを読み書きする脳の部分が、26文字だけ読めば足りる英語圏の人間とは、それぞれ違ったところにあるらしいのだ。

 

「健常」と「障害」のボーダーはクリアではない。80点なら健常で79点以下は、とかいうこともない。

しかし、過去には「単に勉強の出来ない子」で済まされていた人たちの特徴が、実は「障害」だった、と認識されるようになれば、方向性は違ってくる。

しかし、それも、かなり「運」によっている。

この著者のように、セミナーに出て、専門家にコンタクトして、検査を受けさせ、と、必死に原因を探す親か、「勉強なんかできなくたっていいよ」と放置する親か。

専門家のトレーニングを受けに行ける土地に住み(田舎だったりすると無理)、その費用と、付き合ってやる時間の余裕のある親かどうか。

この障害については、学校の教師にもまだ知られていないのだという。そういう中で、理解のある学校や教師に巡りあえるか。

 

それらがないと、単に勉強の出来ない子として、卑屈な一生を送ってしまうことになる。

 

とにかく、勉強になった。

蛇足だけど、この家庭の場合、長女もまた読み書き障害であることが判明した

 

 

父親が漢字が苦手だったと言っていたから、もしかして遺伝か? これは遺伝の可能性のある障害で、スウェーデン王室はそれで知られている。