無事之名馬

女優さんの自殺のことがまだ頭をぐるぐる回っている。

 

武漢ウイルスのせいで世界中が大迷惑を被っており、学生は学校に行けないし、社会人はというと正社員はテレワークなどしながら業務をつないでいるが、非正規社員に対するしわ寄せは相当なもので、社会全体に女性の自殺が増えているというのも、女性には非正規雇用が多いからであろう。

 

で、ふと考えたら、女優さんをはじめ、芸能人の方々は皆、ほとんど非正規雇用みたいなものだということに気がついた。

 

一回のギャラの多さはサラリーマンの比ではないと想像するが、彼らの収入は、不定期の仕事の依頼が入ってなんぼ、であって、会社員のように毎日通勤すればお給料がもらえるわけではないのだ。

ましてや彼女はまだ赤ちゃんを育てている最中。育児ノイローゼもあったのだろうか。

 

自殺は、ほんとやめて欲しい。残された家族はズタボロになる。

後に残ったのが子供や若者なら、まだ弾力もあってましなのだが、娘が40歳だと、親は70歳前後であろう。それから寿命を終えるまで、抜け殻のような人生を、無理矢理引きずって、引きずって、生きていかなければならないのだから。

 

この一件があってから、「無事これ名馬」という言葉が頭をめぐっている。

前に勤めていた会社では、女性でも一般職なら定年まで勤めるのが珍しくなかった。これに対して私なんて、大嫌いな上司に当たったり、仕事に飽きたり、失敗したり、会社の方針がいやになったり、がきっかけで、あちこち転職を繰り返していた。結論から言って、転職の度にお給料は上がっていったから、その点では有り難かったけど、でも、同じところにず~~~~~っといられる人たちって、尊敬してしまう。

 

あの人たちは、私が経験したくらいの災難なら、同じように経験しているに違いない。

それなのに、どうしてずーっと同じところにい60歳になるまで居続けられるのだろう。

 

無事これ名馬、って本当だと思うようになってきた。

別に、特段の才能なんてなくていい。毎日こつこつ働き、家族を養い、税金を納め、ご飯を食べ、ローンを払って風雨のしのげる家に住む。

これって、すごいことなんだ。

犯罪も犯さず、地味だけど堅実に過ごす人生。人間、あまりセンシティブより、多少鈍なくらいでいいのかもしれない。