わんこカレンダー

12月、つまり、来年用のカレンダーを買う時期になった。

私は例年通り、各部屋にかける美しいものと、それから自分用にかける柴わんこのカレンダーを買った。

 

さて、先日、友人に会ったのだが、手土産の一つに、

「あんた柴犬好きでしょ?」

と、柴の仔犬のカレンダーをもらった。コロコロと愛らしい柴わんこの12枚綴りで、こうやって私のために持ってきてくれること自体とても嬉しいことだから、1枚1枚めくって、そのかわいさに悶絶して、受け取った。

 

また別の日、別の人に会ったとき、

「桃実さん、わんちゃん好きなんですよね?」

と言って、別のわんこカレンダーをもらった。こちらも精一杯喜ぶ演技をして、受け取らせていただいた。

私は、わんこと言っても、和犬、とりわけ柴犬狂なのだけど、こっちのカレンダーは、洋犬も多数出ているものだった。洋犬は、柴や秋田に比べたら、そんな好きではない。

 

何にしても、人さまが、私が好きかも知れないと言ってプレゼントしてくれるものなので、「もう家にあるんです」とは言えない。そのうち、余分はこっそり、春頃になったら、古紙回収に出そうかと思っている。

 

これは大昔の話だけど、作家の五木寛之さんが、毎日新聞に連載していたエッセイに、

「私は、あの、メロンパンという、いんちきくさいパンが好きで仕方ない」

と1行書いたところ、それ以来、講演に行っては壇上にメロンパンの入った袋が投げつけられるわ、家にはメロンパンの入った箱がファンから届くわ、で、数年間メロンパンにうなされていたことがあったそうだ。

後日、それに関することを、エッセイの続きに、

「私は、メロンパン『も』好きなのであって、メロンパン『だけが』好きなのではない」

と書かれていたが、それでも、毎日新聞に書いた1行を、ファンがそれほど覚えていて、五木さんに食べさせようとしていたということは、間違いなく嬉しかった、と述べている。

だってこれが、もし、

「私は高級車が大好きだ」

とか、

「金の延べ棒に夢中である」

とか書いても、ファンが反応することなんかあり得ない。

やっぱり、メロンパンレベルの話だから、庶民も飛びついてくれたわけ。

私の柴犬好きも、少ないながら周りに知られているけど、ちょうど五木さんのメロンパンと同じレベルの話だね。