「所有権」が強すぎるせいかも?

日本の民法では、物を排他的に支配する権利として「物権」が定められており、これは、「債権」が自由に設定できるのとは対象に、非常に強い権利であるため、法律で定めるもののみとされている。

物権の中でも、最強のそれは、もちろん、「所有権」である。所有権とは、ものを、自由に、使用、収益、処分できる権利を言う。

 

 

しかしね・・・・

 

最近の「空き家」の増え方を見ると、「所有権って、強すぎじゃん?」と思ってしまうことがある。

ここ横浜でも、こんなふうに、ボロボロの空き家が目に付く。横浜だから、地価は安くはないはずだ。

かつては誰かが住んでいたのだろうけど、相続する人もなく、荒れるに任せたまま。自家用車が停まっている家もあるが、塗料もはげ、伸びた雑草に覆われている。

周囲の家の人たちは、どれほど迷惑だろう。こんな家だったら、泥棒とか浮浪者が住んでしまいそうだ。

固定資産税なんて、とうの昔から払っていないだろう。

 

日本には「戸籍制度」というものがあるから、戸籍をたどれば、相続人がいるかいないかわかる。

しかし、はるか遠い遠い、会ったこともない親族が「相続人でござい」と登場したら、権利だけ主張し、管理や税金の支払いと言った義務は逃れたがるに違いない。なまじ戸籍制度というものがあると、海外にまで、会ったこともない相続人を追わないと、話が決着しないこともある。それでも、連絡が取れればまだましな方だろう。

 

固定資産税が滞納されたって、自治体の方だって、おいそれと訴訟を起こし、競売し、というわけにはいくまい。それには多額の費用もかかるし。

 

日本の民法は、不動産には、必ず家族や相続人がいて、それらの人がちゃんと引き継いで管理してくれるもの、と期待しすぎている。もう少し、不動産の所有権に対しては、管理義務と並行して、物権を緩めないと、国中、荒れ果てた空き家の管理に苦しめられるだろう。文句があるなら、ちゃんと管理し、税金を払えと言ってやれない制度がはがゆい。

 

ところで、先日TVを見ていて偶然知ったのだが、判例によると、「不動産の所有権は放棄できない」のだそうだ。法律の明文にはないことで、最高裁でそう判示された、ということだが、それならますます、物権をもうちょっと緩めねば、と言いたくなってくる。