女と虫

どこから入り込んできたのやら、前の人の机に、わりと大きなクモがのそのぞ歩いているのを発見した。

前の席の人に注意したら、その女性は案の定、「きゃ~~」と悲鳴を上げ、椅子から立ち上がった。それ以外の女性らも引いている。

私は、クモは人間に害をなさないのを知っているので、ティッシュでそっとくるんで、窓の外から逃がしてやった。

 

私の友人で、レンタル農場で野菜を育て始めた人がいるが、彼女も大の虫嫌いで、虫と戦わねばならないのが一番つらい、とこぼしていた。

世の中の女性は、どうやら虫嫌いの方がメジャーらしく、女性は虫を見たら、「きゃ~」と悲鳴を上げるのが定番?の反応らしい。

そして、それを聞きつけた男性に助けてもらうらしい。

私が若い頃から男性に縁が乏しかったのも道理だ。

兄と二人のきょうだいで、遊び友達も男の子ばっかり。時々勘違いして、「桃実ちゃんは女の子だから」と、セルロイドの人形なんか買い与えてくれる人がちらほらいたけれど、私はそれがイヤでイヤで、眉間にしわをよせて嫌がった。母が汗かきながら、プレゼントしてくれた人にフォローしていたのを、よく覚えている。

私は、とある占い師に、

「あなたは本当は男に生まれるべきだったのに、間違って女に生まれてしまった」

と言われたことがあるが、これはマジでそうだと思っている。定番とされる女性的な反応が、私には通じないことが多すぎるからだ。

 

勉強でも男の子とトップを競ったりせず、男の子とばっかり遊んでおらず、女の子と遊んで、お人形遊びをし、虫を見たらきゃーと悲鳴を上げて男の子に助けてもらうようなキャラだったら、もっと違う人生で、もっと早く、日本人の男性と結婚していたのかもしれないなあ。

私は絶対同性愛者ではないけれど、自分の女性性(←こんな言葉ある?)の薄さには、生まれてからずっと、とまどっている。