田中さんと橋田さん

私の実家は、民放ドラマを見るのをあまりよしとしない雰囲気の家だった。従って、「北の国から」というフジテレビのドラマが評判いいらしい、と聞いても、ほとんど見たことなかなった。

 

度重なる大雪などで、撮影経費がかかり、「カネ食いドラマ」と陰口をたたかれていたそうだが、当時のフジテレビにはそれをはねのける根性があったのだ。あの「南極物語」を作ったことも考えると、当時のフジテレビには、なんと豪胆な責任者がいたものだろう。それに比べ、今のフジときたら。河田町も不便そうなところだったけど、どうも、さらに辺鄙なお台場に移ってから、どんどん矮小な局に成り下がっていった観がある。本日、「外国資本が20%を超えていた時期があった」という発表が同局からあったけれど、K国の法則にたたられてしまっているのだろうか。

 

田中邦衛さんが、老衰のため、88歳でお亡くなりになったそうだ。北の国から、は、原作者の倉本さんによると、田中さんが父親でなければ作らせなかった、という。

しかし、田中邦衛さん(余談:あの人の名前は「くにえい」だと思っていた)、って、本当に独特の顔立ちをしていた。あの顔のかたが、隣に立っていたら、一瞬ぎょっとしない? 「俳優」という職業に就いたから、あの風貌も肯定されたような感じになった。案の定、任侠系の映画にも出ていたそうだけど、北の国からでは、2児を育てる良き父親を熱演。あの人を起用した、倉本さんと、キャスティング責任者の才覚は鋭いものだったようだ。合掌。

 

もう一人、ドラマ界でお亡くなりになった重鎮は、橋田壽賀子さん。

橋田氏は、「私は安楽死で死にたい」という願望を持っていて、その種の本も出されたそうだが、「周囲に反対され、撤回した」と聞いた。

これを聞いて、不思議に思った。もちろん、いくら本人が渇望しても、安楽死は、そもそも日本では非合法だし、海外の合法な国でそうするとしても、途方もない困難を伴うだろうが、橋田氏のように、家族もおらず、意識もしっかりして、金銭的に問題の無い高齢者であれば、私には大いに納得できる。これほど著名な高齢単身者が勇気をふるって提案してくださったのを契機とし、穏やかに議論するに重文価値のある話だだ、と私は思っていた。

 

しかし、こう言っては悪いが、お亡くなりになってひとつ安心したことがある。

もう、これ以上、泉ピン子主演のドラマが制作されることはなくなるだろう、ということ。

橋田氏というと、ドラマを書けば100%ピン子を使うのが、いやでいやで仕方が無かった。

なんで脚本家にここまで出演者を決定する権限があるのだろう?

とにかく、橋田氏といえば、強固なファミリーがあって、ドラマ(←こちらも「渡鬼」なんて見たことはないのだが)には、ピン子を始め、橋田ドラマには、ほとんど想像のつく俳優ばかりが並ぶ。

ご自身が不美人のせいか、松坂慶子などの美人女優が大嫌いで、使う美人女優は佐久間良子中田喜子大原麗子なんかに限られていたが、とにかく、ピン子、ピン子。大河ドラマでも朝ドラでも、ピン子、ピン子。うげ。

 

とにかく、私の周囲にピン子をポジティブに評する人なんて、一人もいないんだよ~~~~!

女性週刊誌で「嫌いな女特集」をやると、絶対に上位に入る女。

昔、下品な弾き語りか何かやっていたんじゃなかったっけ。

とにかく、橋田氏の死去とともに、ピン子の女優(←こんな美しい言葉、似合わないけど)生命も終わった、と願いたい。

旦那はお医者なんだから、医師夫人として余生をお過ごしあれ。