加齢と脚力

数日前、とある横断歩道を渡ったときのことだ。

私が渡り始める前から青になっていた。私の前には数人の人にまじって、あの、池袋の某上級国民のように、両手に杖を持って、一歩一歩、かろうじて歩いている老人がいた。私が真ん中まで渡ったところで、案の定、青信号は点滅しだした。私はいつも通り、ぐわ~っと走り出し、ピコピコの間に渡り終えたが、そのご老人は、まだ横断歩道の3分の1くらいを残していた。

歩行者信号が赤になっても、急に車両用信号は青には変わらない。しかし、あの遅々とした歩みで、とうとう、車両用信号まで青になってしまった。

先頭車両の人たちは、当然、おじいさんが渡り終えるまで停まっているけど、後続車両が、

「なんで進まないんだ~~!」

という意味でクラクションをブーブー鳴らし始めたらどうするんだろう、と、ハラハラして見ていたけど、私も用事があったし、関わると面倒な証言を求められかねなかったので、その場を走り去った。

 

池袋の上級老人の方も、杖2本でやっと立っていられるほど弱った足で、よくプリウスを運転していたなあ、と思ったが、逆に考えたら、プリウスであってもなくても、とにかく、足が動かないから車しか移動手段がなかったのだろう(タクシーは上級国民にはNGなのか)。88歳になっても、あの前日まで、事故を起こさずに運転していたのだから、それまでつちかってきた運転技術に、疑問を挟む理由がなかったのも、多少は分かる気がする。老いとか衰えは、病気でもしない限り、ある日から急に来るものではないからだ。あのサンモニの関口宏さんも、「車庫入れが下手になった」というのがきっかけで免許を返納したという。事故がきっかけ、は、大きい。ところで、池袋の老人は免許返納したのか、それとも免停になったのか?

 

今日新聞で見たのだが、北アルプス槍ヶ岳登山中のグループが、

「落石があり降りられない」

と、ヘリによる救助を求めた、とあった。

19日、このあたりに震度4の地震が発生したため、この影響で落石が起こった可能性があるそうだが、その登山グループの年齢がわかる限りだと、「62歳と59歳のパート女性」に、「61歳の会社員の男性」。

たぶん、槍ヶ岳に登るくらいだから、彼らは登山のベテランなのだろう。

素人が年取ってから、いきなり登れる山ではない。

しかしね・・・・ 

アルプスの登山なんて、もう、40代までで定年にしたらどうだろう。

ずーっと登っていると、衰えを感じなくなる。今回の件は衰えではなくて地震に伴う落石のせいだろうけど、なんか高齢すぎる、と思うのは私だけだろうか。50過ぎたら、もっと平らな山にとどめておいたらどうだ。

三浦雄一郎が、ものすごい人数のスタッフに守られてエベレストに登るのとは訳がちがう。三浦翁は、「高齢になってから高所登山に挑む」悪い例を一般人に喧伝してしまったように思っている。

 

北アルプスの人らは、膨大な救出費用を負担することになるのだろう。

池袋の老人は、頑として自分の運転ミスを認めないまま収監の身となるようだが、もし、この老人、ないし、私が見たお爺さんが、

「横断歩道の青信号の時間が短くて、老人は渡りきれない」

と訴えたとしたら、それは大いに耳を傾ける。