働き方

それにしても、私がまだ若かりし当時の会社って、いろんなところにとにかく人を雇っていたものだった。

今だったらPCでさっと処理してしまうような作業に、2~3人くらい雇って、紙と手による作業で処理していた。

机の上を拭き、お茶を入れて、郵便出しをするのが仕事、という女性も普通に雇われていた。

男性が数名の部署に、女性はアシスタントとして1名配属される、ってのが日本企業ではよくあるパターンだった。どんなに仕事ができなくても、男だったら、それなりの「長」の肩書きを与えられ、家に帰ると妻と子供3人くらいがいた。

 

その後、アメリカ系企業に転職してびっくりしたのは、今なら笑い話だが、女性も男性と同じように仕事をしていること、そして中には、定年まで勤める女性がいたことだった。

それと、もう一つ。

正社員ではない、という女性が何人も働いていることだった。

「あの人たちは何ですか?」

と聞いたのが「派遣社員」という職業の人らとの出会いだった。

私にとって、「社会人として働く」というのは、正社員になることとイコールだったので、まだ若いのに、正社員ではない働き方をわざわざ選択するという危なっかしさに、驚愕した。

そして、彼女らが派遣社員で働く理由が、

「海外旅行に行くため」

と聞いて、二重にぶったまげた。私の実家は貧しくて、海外旅行に行くなどとは、ほとんど「遣唐使、遣隋使」レベルにあり得ないことだったからだ。私も当然その会社に入るまで、飛行機にすら乗ったこともなかったので、周囲には天然記念物ないし狂人扱いまでされた。旅行に行くという習慣のない私が、海外旅行マニアばかり集まるような会社に入って生じた悲劇(喜劇?)だった。

 

今、思い返すのだが、「数ヶ月派遣で働いてお金を貯め、数ヶ月の海外旅行を繰り返す」パターンで生きていた彼女たち、その後、どうなっただろうか。彼女らのスキルは「経理」「一般事務」「ファイリング」などごく普通のものだった。ならば、年齢とともに仕事の口は減っていき、もっと若い人たちに奪われていったはず。あのあと、ちゃんと(?余計なお世話だが)正社員などの安定した仕事に就いたのかなあ。

 

しかし、常に需要に困らないスキルのある人だったら、今でも、数ヶ月働き数ヶ月旅行、というのは十分可能だ。たとえば、看護師、薬剤師、介護士、保育士、理学療法士プログラマーなど。プログラマーなどのIT系だったら、南のリゾート地で、PC1台があれば仕事はできる。

 

難しい試験に合格しなければならない弁護士や公認会計士は、今、せっかく資格を取っても、就職口のない人がたくさんいるらしい。

税理士だって、ネットで税務申告ができる時代になってきているから、従前よりは仕事が減る可能性がある。

親の世代であれば喜んで就職した「銀行」や「(朝日)新聞社」などは、もう、歓迎されない。

 

今の若い人たちが就職するのは、どんな職業で、彼らが定年(=という制度がまだ存続しているとしたら)になるころには、そのうちどれほどが残っているのだろうか。私らには想像もつかないビジネスが一大勢力になっていたら面白い。というか、そうあって欲しい。