苦情を言う勇気

一応、ファイナンシャルプランナーの資格を持っている。これは2年間に一定数の単位を取得し続けないと、ライセンス失効となるので、2年の間、継続テストを受けたり、単位更新用セミナーを受講したりしなければならない。

 

先日、興味のあるセミナーを見つけたので、申し込んでおいて出席した。

行ってみると、講師はすごいおじいさん。ま、高齢だからと言って悪いってことはないだろう。実際、長年証券会社に勤めていた人だというし、話し初めたらちゃんとしていたので、安心して聞き始めた。

しっかし、2時間の講義なのに、いくら待っても待っても、一般論ばかりで、肝心のテーマにちっとも話が及ばない。

結局、最後の最後、5分くらいになって、その日のテーマに関することがちらっと話されただけで、講義は終わってしまった。

はあっ?と思った。

トイレに行ってから、エレベーターの前で立っていると、出席者の一人が、「今日のテーマと話が違う」と文句を言っているのが聞こえてきた。私も加勢させていただこうかな、と思ったけれど、それは後述の理由で止めておき、家に帰ってから、いかに今日の講義はテーマとズレていたか、これじゃだまされたようなものだ、と、「だます」という言葉の代わりに「欺罔」なんて難し目の言葉を使って苦情を述べた。すると、主催側でも、今日の講義の内容に関して、講演者とは話をしたそうで、私が依頼したとおり、料金は全額返金してくれた。単位は追加してくれた。

 

私は、ブログにならアレコレ毒を吐けるけど、対・人間に苦情を言ったり抗議をするのは非常に苦手だ。

子供の頃から、超男尊女卑論者だった母から、

「女の子は文句を言ったらだめ。女の子は大人しくしていなければだめ」

「男の人はみんな偉いんだから」

「何かあったら自分が悪いと思いなさい。人のことを悪く言ったらダメ」

としつけられていたので、なんでもぐっと飲み込んで納めてきた癖が根強いからだろう。職場でも、私の悪口は上司に宛ててごっそり言われてきたけれど、私は周囲の人の悪口をその人の上司に言うようなことはまずなかった。私が完璧でない限り、人のことは悪く言えないから、と。しっかし、それでは私、相当損をしてきただろうなあ。

 

今回は、私も年を取ったし、ただ黙って金を取られているのは余りに腹立たしかったので、しっかりと苦情を入れた。

ただ、苦情を入れなかった出席者の方が多かったのではないだろうか。あんなズレた講義に、5000円も取られたって、黙っている人も多かったんだろうな。「単位さえくれればいい」と割り切っていたりして。わざわざ主催者の側から出席者全員宛に、

「本日の講義は、テーマに沿っていなかったと苦情がありましたので、皆様方には返金いたします」

なんてお知らせが出たとは考えられないし。やっぱ、言うべきは言わないと損だ。

 

やっと苦情なり文句なりを言えるようになったけれど、感情が爆発し過ぎるとかえって共感を得られないので、できれば1晩、寝て起きてから言うようにしている。私が当日文句を言っていた人に加勢しなかった理由は、そこにもある。

まだ、ちょっと弱いかな。その場でうまいこと映画のシナリオのようにスラスラ適切なセリフを言えたらいいんだけど。