ナシと山田さんの思い出

驚くほど高かった玉ねぎも、北海道産が出回り始めたので、徐々にだが値段は下がってきた。

その代わり、というのも変だけど、「梨」が高い。果物はそもそも安い物ではないのだけど、梨の値段にもぎょっとしている。

 

 

 

うちのアメリカ人旦那は、日本の梨が大好きだ。そもそもアメリカで、「梨」というと、あの、ひょうたんみたいな形のものを指す。和梨と違って、少し室内に置いておき、柔らかくなってから冷やして食べる。英語で梨は「pear」というが、「一対の」という「pair」と同じ発音でちょっと紛らわしい。日本のものを、西洋種と区別するために、「Japanese apple pear」と呼ぶことがある。言い得て妙だ。しかし旦那はあえて、洋梨の方を「western pear」と呼び、日本のそれを単に「pear」か「nashi」と呼ぶようになった。そのくらい日本の梨が好きだ。

 

ところで、これは旦那が日本で一番最初に就職した会社での思い出話。

社内に、何を仕事としているのか全くわからない、というおじさんがいた。名前は山田さん。今ではなかなか考えられないことだけど、当時はまだ、長く勤めているおじさんだというだけで、仕事が全然できなくても、定年まで会社で飼っていてあげる時代だった。旦那によると、山田さんは、どうも、新聞記事を集めて時間を過ごしているらしかった。

社内で何か人手が急に必要な仕事ができても、旦那が、「Yamada-sanに手伝いを頼まないの?」と聞いても、全員が「No!」と言うような人だったそう。

そんなわけで、旦那は、山田さんに、「western pear」というあだ名をつけた。