保険会社新入社員の勧誘ノルマ

急に、思い出した。

保険会社に就職した新入社員って、所属部署が営業でなくても、新入りの数ヶ月間に「新規保険獲得◎件」ってノルマ、まだやらされているのかな?

 

私が大学を卒業してすぐのこと。全然連絡をとっていなかった中学時代の同級生(男)から、突然電話がかかってきた。

この人には、ちょっとわけあって「横浜に引っ越しました」とはがき(←なつかしい)で知らせていたのである。

電話も当然固定電話しかなく(そもそも固定電話なんて言葉もなかった)、必ずと言っていいくらい母が出たものだった。

「K君から電話よ」

と母から言われて出たのだが、彼が言うには、

「ちょっと保険の話があるので聞いて欲しい」

とのことだった。なんだか分からないけど、当時、新宿のとあるレストランで出されていたあんずのパイが大好きだったので、それが食べたいと言ったら「おごってあげる」というのでノコノコ新宿まで出ていき、そこで落ち合った。

彼はY生命保険に就職したのだった。しかし、理系だったので、死亡率や保険料金との計算なんかする職種に就いたと聞いた覚えがある。でも、私にY保険の商品をあれこれ説明し、

「新入社員のノルマが◎件あるけど、まだ1件も売れていない」

と、必死に食い下がってきた。私は当時、母が保険の外交のおばさんからかったM生命の養老保険を持っていたので、それ以上保険加入する気は無かった。

「一回家に持ち帰って母と相談する」

と言って辞去。あとで彼からまた電話がかかってきたけど、丁重にお断りした。

彼はあのとき、ノルマ達成できたのだろうか。大体、親兄弟は全部入れさせるだろうから、それ以外に何件営業力があるか試させらせたのだろううけど、いまでも保険会社の新入社員って、これやらされているのかな。

 

この男の場合、直接の知り合いだったからまだ良かった。

私が就職して2年目だったかな、デスクの電話が鳴った。

「ぼく◎◎ゼミでアナタの2年先輩だったXXです」

という。2年先輩だったら顔も知らない。当時は「個人情報保護法」なんてなかったから、名簿のコピーも勝手に取れた時代だった。そのゼミ生名簿には就職先まで印刷されていたのだ。

「ちょっとお話があるので、出てきてくれませんか」

モテないブス子だった私は、ちょっとだけときめいて、会社の近くに指定の場所へ行った。そして、先輩だという知らない男が待っていたのだが、

「僕は◎◎生命保険に入りまして」

と言い、あとは上記の彼と同じだった。

知らないやつから、誰が保険を買うかって。

まあ、当時は携帯もネットも何もなく、名簿をたどってアタックするというのが古典的な手法だったんだろうけど、知らない人間にまで接近してきて、腹が立った。

 

と、まあ、こんな経験を思い出した。いまでは、Y生命保険もM生命保険も合併してしまったが、とにかく、新入社員の保険獲得って、まだやらされているのだろうか。