あの、池袋暴走事件の、上級国民氏が、獄中で、老衰にて亡くなったという。
享年93。
あの事件は、いろんなことを私たちに教えてくれた。
まずは、「上級国民」というワードが日本中に浸透したとおり、かつて政府の関係する機関の要職にあった人は、引退後もその特権がなくならず、人をあやめても逮捕すらされない、という事実。高齢で、負傷もし、逃亡の恐れもなかっから、などと言われていたけど、高齢で負傷していたとしても、普通の民ならすぐ逮捕されていたはずだった。
上級国民氏は、執拗に、自動車メーカーに対し、「高齢者にも運転しやすい、安全な車を造ってほしい」と責任を転嫁し、自分の運転ミスは頑として認めなかった。それはおそらく、弁護士から、絶対に自分の落ち度を認める発言はするなと言われていた通りにしていたのだろうけど、罪もない若い母親と娘の命を、本人の故意ではないにしても奪っておきながら、弁護士ってイヤなやつだな、と改めて思った。
そして、高齢ドライバーに対する免許返納のすさまじい動機付けになったこと。
実況見分の場で、上級国民氏は、両手に杖を持ち、かろうじて立っていた。片手に杖、ならまだしも、両手に、だった。あんなに両足が弱っていながら、車を運転していたなんて。
上級国民氏は、逮捕されなかったので、ずっと「元院長」という苦しい肩書で呼ばれていたが、最後の肩書は「受刑者」だった。あれほどの高齢者を収監させなければならない刑務所の側も、受け入れ態勢が大変だったろう。
私は完全にペーパードライバーだが、自分が道を歩いていて、突然高齢ドライバーの運転する車にはねられないとも限らない。とにかく、これも高齢化社会の弊害の一つだと思う。