障害の2ケース

先日、スーパーで買い物のレジに並んでいたら、ひどく待たされた。

見たら、70代くらいの男性がビールなど買って支払いにのぞんでいたのだが、レジの女性が、何度も何度も、

「あと、480円です」

とか説明していたのである。ゆーっくりと、「あ、と~~、480えん、です~」という感じで。

しかしその男性、なかなか理解ができないのか、きょとんとしている。ついにそのレジの女性は彼の財布を指さして、

「ここから、もう、あと、480円、出してください~」

なんてお願いしている。さんざん繰り返したあと、その男性は、お札を出し、レジの人はお釣りをトレイに入れた。

そうしたらその男性、お釣りを取らずに去ろうとしていた。そしてその女性は、

「お客様、お客様、これ、お客様のですよ」

と呼び止めた。男性は、かろうじて、自分が呼び止められたことは分かったみたいで振り返ったのだが、そのトレイにあった何枚もの硬貨が自分のものだと理解するのに、これまた時間がかかっていた。結局は、レジさんに言われてそれら硬貨を財布にしまった。

きっと、軽度から中度くらいの知的障害がある人だったのだろう。見た目はごく普通だったのに、こういう人は、話しかけてみないとわからないものだと思った。さまざまな客を相手にしなければならないレジの人は大変だ。

 

 

こちらは、先日、ちょっと急ぎの用事でタクシーを拾ったときのこと。

行き先を告げたら、その、かなり高齢のドライバーは、喉にマイクロフォンのようなものを当て、

「この辺はよくわからない」

と言った。ああ、なんらかの事情で声帯を摘出してしまったのだろうと思った。ちらっと座席の前に目をやると、タクシー会社からのメッセージが貼られており、

「この人は喉の手術で声帯を取ってしまったけれど、耳は聞こえますので運転に支障はありません」

とあった。もう少し話しかけたら、日頃は中区を走っているので、この辺は不慣れだ、と。私は

「案内しますから大丈夫ですよ」

と言い、道案内を始めた。

私が話しかけやすい客だと思ったのか、道中、喉にマイクを当てて何度も話しかけてきた。声、というより、よくテレビのギャグでやある「ワレワレハ ウチュウジンダ」みたいな音声で話してくる。途中どうしても聞き取れないものが何度かあったけど、無事に到着した。

こういのが、個人タクシーだと正直びびる。以前、個人タクシーに乗ったら、「私は耳が良く聞こえませんので大きい声で話しかけてください」って堂々貼ってあってたまげた(以来、個人タクシーは極力避けている)。今回のドライバーは法人タクシーだったので、法人タクシーなら個人より運転手の健康管理はしっかりしているだろうと思ったし、それに、多少の障害と年齢はあっても、ちゃんと働けるうちは働くのが望ましい。