chopstick ambassador

喪中につき、新年のご挨拶は、(以下略)。

 

さて、以前もちょっと書いたけど、私は、日本を旅行する外人たちの箸の持ち方を見ていると、グアーッと怒りがこみ上げてきてしまうのである。いくら、

「習っていないんだから仕方ない」

「彼らの食文化にはないものなんだから仕方ない」

「見ないふり、見ないふり」

と念じても、抑えるのに苦労してしまう。

 

旦那の姪のRitaは、なぜか私のことを慕ってくれるのだが、その彼女が、来年、もとい、今年、日本に来たいと言い出した。NYではさんざ世話になっているので、本当に来たら世話してやらないといけないなあ。

しかし、問題は彼女ではない。旦那のBill君である。

典型的なアメリカンボーイと言っていい彼は、東洋には微塵も興味なく、朝昼晩3食ハンバーガーでも構わない。

おまけに、魚介を、全く受け付けない!

嫌いなんだって。何か外で不慣れなメニューに挑戦する時は、Ritaがほぐして、中に魚介がないかどうか見てやっている。

 

Ritaだけが来るわけはない。当然夫のBill君もくるけれど、彼は日本に来て楽しめるのだろうか。

もちろん、食に関しては、焼き鳥や焼肉、和牛のステーキなど、肉をメインにしたもの、極端な場合はハンバーガーやホットドッグを与えていれば良いけど。でも、アジア食にも抵抗なくなんでも食べるRitaに比べると、ちょっと重たい。

 

この間Ritaの家にお呼ばれした際、割り箸を1膳持参した。

ひどくおせっかいなことだとは思うが、Billに箸の使い方のトレーニングをしてみることにした。

「いい、Bill? 日本に来るのだったら、今からお箸を練習しておいてくれない?」

そう言って、まずは1本の箸を、親指の付け根から薬指の爪の付け根に渡し、

「いい、この箸は動かさないのよ。動かすのはもう一本の方だけなの」

と言い、もう一本を、人差し指と中指の間に挟んで、パクパクと開いたり閉じたりしてみた。

「やってごらん?こうやって2本の指で挟んで、上の箸を開いたり閉じたりして」

しかし、私はここで、事実を知った。

こんな動きでも、箸のnativeでない彼には、全くできなかったのである。

こんな「パクパクの動作くらい簡単だ」と思っていた私はびっくりした。

アメリカの割り箸には、外袋に、箸の持ち方のインストラクションが図解入りで印刷されている。

それすら見ようとしない。

そしてBillは、

「日本では、いつもフォークを持って歩くから大丈夫」

と言った。

人間、覚える気の無いことは、絶対に覚えないんだ・・・・・。

私もおせっかいだとは思うが、ここまでやる気がないということを知り、落ち込んでしまった

自分の旦那に少し練習させたらすぐ覚えた実例があったので、今から練習しておいたら、来日までにはマスターするだろう、と思っていたのに。

 

また、ある時は、旦那の長年の友人とその家族と、タイ料理店に食事に行った。

私がウエイトレスさんに箸をお願いしたら、びっくりしたことに、彼ら一家も、「私らにも箸を」と言い出した。

へえ。

当然だが、彼らの持ち方は、私を激怒させる持ち方だった。グワーッ。

 

しかし、彼ら一家の最年少、中学1年生の次男坊君は、箸使いにちょっと見込みがあるようだった。

私は、彼のそばに行って、上述と同じことを伝授をした。

まだ中学生なので、柔軟だった。

持ち方はまだひどかったけど、向上心があったし、あれこれ苦心しているのが愛らしかった。

「あなたは良い資質がある。このまま練習を続けたら、きっと上手に持てるようになるわよ」

と伝えておいた。

彼の人生には、アジア系の人間と直接関わることは白人の数に比べると圧倒的に少ないだろう。

この日本から来たおばちゃんが、そのわずかな人数の一人として、ちょっとでも彼の記憶に残っていてくれたらいいな。