前にちょこっ書いたのだが、私がとある作品で賞を受賞し、賞金もゲットした、と昔からの友人2名に話したところ、うち、A子の方が、
「鰻だ、鰻だ、鰻でお祝いしよう。私、日本一美味しい鰻屋さんを知っているから」
と舞い上がっていた。彼女はグルメを自称し、美味しい物に目がない。
とまれ、その約束(?)を履行するため、先日、都内某所で落ち合った。当然、私とB子は初めての店だが、「日本一美味しい」と太鼓判を押すものだから、A子は1度は食べたことがあるのだろう、と思い込んでいたところ、なんとなんとA子もその日初めてであることが判明。
「叔母がね、ここ美味しいって言っていたから」
と言う。オバサンと仲がいいとは聞いていたが、他人の味覚をそんなに信じているのかい。
さて、しばらく待って、鰻が我々のテーブルに運ばれてきた。
その店は、名古屋風の鰻屋なのであった。メニューには当然「ひつまぶし」が筆頭に書かれている。自称グルメのA子はひつまぶし(しかもご飯大盛り)、私とB子はうな重を頼んだ。鰻の産地を尋ね、愛知県産と答えをもらった。
A子は嬉々として食べ始めたが、B子と私は「ん・・・・・・・・・・?」。
普通、うな重の鰻といったら、ふっくらつやつやしているものだと思っていたら、そのうな重の鰻、表面がとんがっているくらいカリカリなのである。まずくはなかったけど、「うな重ってこんなもんかなあ?」と、首をひねりながら食べた。お吸い物にオプションが効いたので、私は肝吸い、二人は松茸のお吸い物を頼んだ。
で、一人頭5000円超の額を、私がまとめて払った。
帰りの電車、同方向であるB子と私は、JRに座りながら、なんか釈然としなかった。B子が、口を開いた、
「あのさ~~~、あんたにおごってもらっていたから悪くて言い出せなかったんだけど、あれって、そんな、A子が言うほど美味しかった?」
私は、B子がそう言ってくれるのを待ちかねたように賛同してしまった。あの「表面カリカリ焼き」は、あくまで「ひつまぶし用」の焼き方であって、あれをまんま、鰻重にも乗っけてくるとは、私もB子も予想だにしていなかったのである。鰻重なら鰻重用に焼いた鰻を出すべきではないのかい!おい、店よ!!
B子も、
「A子ったら、何が『日本一美味しい鰻』だよねえ」
と憤慨してくれていたので、私は、
「もうA子のいうことは話8割引で聞かねば」
と言い、それも激しく賛同し合った。
あとでB子は、
「きっとA子はあんたのカネで叔母さんお勧めの店で食べてみたかったんだよ」
と言った。かもね、まんまとカモられたのかも。
でもいいけどさ。友人が少ない私には、あだ名で呼んで付き合ってくれる数少ない友。このくらいおごったっていいよ。
姓にさん付けで呼ばれるところでは、長い付き合いの友人が出来たことがないのだ。