みちのく一人旅

先日、明け方に、夢を見た。

仲が悪かったのに、父から電話がかかってきた夢だ。

私のスマホが鳴ったのだが、聞いたこともない呼び出し音だった。

ともあれ、出てみたら、父だった。父には不似合いの、何だか明るく楽し気な口調。電話なのに、顔まで見えていた。

確か、「オー、元気か」みたいなことを言っていたが、忘れた。

 

その数日前だが、みちのくに一人旅をした。目的は、自分のルーツさがしである。

これまで興味はあったけれど、ずーっとしてこなかったのを、決行した。

父方の爺さんは、どういう経緯であの性格異常の婆さんと知り合い、一緒になり、父が産まれたのか、誰も知らない。

母は、婆さんに、そのことを尋ねると、「私の傷口にふれて」と、ますます発狂したので、聞き出すことはできず、その辺の事情は誰も知らない。

爺さんの写真もない。日本には、戸籍謄本という便利なものがあるので、さかのぼって見てみると、祖父母は、父が産まれてから入籍し、すぐ抜いている。要は、父を、「非嫡出子にしないだけ」の婚姻届けであった。婆さんは、育ててもいないくせに、父の母親ぶり、嫁に来た母のことを、姑ぶっていじめた。本当に、嫌われるために生まれてきたようなクソババアだった。俗に、「若気の至り」とは言うが、こんな婆さん(当時は若かったとはいえ)のどこが良くて、爺さんは一時なりとも一緒になってしまったのだろう?

 

ともあれ、戸籍謄本に出ていた本籍地を訪ねた。

実は、20年ほど前、この戸籍謄本を頼りに、両親が訪ねていた。そして、某お寺に墓もあった、と言っていたが、あいにく私は当時、興味が皆無だったので、詳しいことは聞かずにいた。

そのはてしない田舎、かつてはイカ漁で栄えたけれど、今は見る影もない寒村を、訪ねてきた。

有難いことに、1日数本はバスが通っていた。

本籍地だったところには、もうその家の関係者は住んでいなかった。近所に聞いてみても、知らない、という。そりゃ、仕方ない。もう何十年も前の話だものね。

 

両親から、墓があった、と聞いていたので、地元の地図を見ながら、お寺を一軒一軒訪ね歩いたら、偶然と言うか仏様のお導きというか、父方のお墓を発見することができた。

住職さんに聞いても、もう無縁墓になっているので、そのうち廃墓する予定、という。

裏面に刻まれていた建之者の名前は、爺さんの兄になっていた。

私は、雑巾を借りて、もう廃棄寸前のその墓を掃除し、住職さんから借りて、ろうそくと線香を立ててきた。

帰宅後、そのお寺あてに、「お経でもあげてやってください」と、1万円送った。現金書留なんて使ったの、何年ぶりだろう?

 

夢の中で、父から電話がかかってきたのは、そのあとである。