月旦

TVを見ていると、NHKも含め、登場人物がやたら「めちゃくちゃ」という語を連発するので、頭が痛くなる。

この言葉は、主には肯定的に、時として否定的にも使われているようで、

「めちゃくちゃ美味しい」(←安易なグルメ番組が多く、登場する若手タレントたちが乱発する)

「めちゃくちゃいい」

「めちゃくちゃ寒い」

など。

亡母は「めちゃくちゃ、って悪い言葉でしょう?」と憤っていた。確かに、破壊する、といった感じがある。

 

 

上の辞書によると、最後に「補足」として、

 

近年、「―楽しい」「―怒られる」のように、副詞的に用いて、程度のはなはだしいさまの意を表す例が増えている。

 

とある。やはり、日本語として本来的な使い方ではない。

「かなり」「相当」「大層」「非常に」「すこぶる」など、他に言葉が多々あるのに、なんでも「めちゃくちゃ」で済ませるボキャ貧の若者たち。

 

作家の向田邦子さんのエッセイの中で、

「ひどくおいしい」

というフレーズがあったのを、よく覚えている。「ひどく」というと、私としては、ややネガティブな印象のある言葉なのだが、「おいしい」にくっつけても何ら違和感はなかったのが新鮮だった。

先日、その向田さんのとあるエッセイを「ひどく」久しぶりに読み返したら、中に、

 

「月旦をしているのである」

 

という言葉を発見した。げったん?

早速辞書を引いてみたところ、と言う言葉を発見した。これは「月旦評」の略で、人を論評する行為をさすようだ。

はあ~~・・・・   

使ったことはおろか、このエッセイを見なければ死ぬまで知らない言葉であった。

日本語は深い。世界でもっとも習得が難しい言語だと言われている。

なんでもかんでも「めちゃくちゃ」で表す若者らは、「月旦」なんて知らなくてもいいから、もうすこし、昭和の人が書いたものを読んでみたらいいのでは。