口からいやな物音をたてるオヤジ

いつも思う。道を歩いていて急に「カ~~~~~ッ」と声を上げ、「ぺっ」と痰を吐いて立ち去るオヤジは、後ろから蹴り飛ばしても、撲殺しても良い、と言う法律があったらいいのに、と思う。道端にたばこの吸い殻を平気で捨てていく人らもしかり。ああいう人たちは、自分らの落下物が自然に消えてなくなると思っているのだろうか。

 

さて、これは4月初旬に小田原城へ桜を見に行った帰りの東海道線の中の話。

車内は混んでいたが、私は猛ダッシュして、老いたる旦那のためにかろうじて席を確保し、私はその前に立った。すると、ある駅で、競馬新聞を右手に持った70歳前後くらいのオヤジが乗ってきて、私の左隣に立った。

しかし、このオヤジ最悪だった。大きな飴を舐めていて、その舐める音が「グチャッ、グチャッ、グチャッ」と、とほうもない音量なのだ。これまで生きてきて、あんな大音量を立てて飴を舐める人間を見たことがない。

旦那は、いくら日本化しているとはいえ、口から出る物音が大嫌いだ。ほどなく、

「Can't believe this........」

と言って、指で両耳の穴をふさいだが、音が大きすぎて防げるわけもない。私が隣のオヤジを何回かギッとにらんだけど、私の目が小さくてにらみがきかないせいか、オヤジが鈍感なのか、そのオヤジは、全然変わることなく、グチャグチャ大音量で飴を舐め続けた。飴を舐め終わったときは、一瞬ほっとしたら、オヤジは、追加の飴を口に押し込み、再びぐちゃ、ぐちゃと大音量で舐め続けた。

私は怒髪天に来て、体の位置を左に左にとずらし始めた。飴オヤジは、だんだん左へ左へと追いやられて行き、しまいには、もっと左にある席が1つ開いたので、そこをめがけて座りに行った。ほっとした。旦那も、「good job」と。

しかし、飴オヤジは、はるか向こうの席においても、大音量で飴を舐め続けたので、こっちまで音が響き続けた。こっちもナーバスになっているので、音を拾ってしまうのである。

 

満員電車の中で、隣に立っている人が耳元でガムを噛むあの音も身の毛がよだつけど、飴を舐める音がこれほど不愉快だとは、あの競馬新聞オヤジで初めて知った。「うるさいからグチャグチャ音を立てるな」なんて言ったら、切れられていたかなあ。ともあれ、日本人は、西洋人に比べ、口から出る音に若干鈍感なところがあるかも。