微妙な言葉、アクセントの違い

私は中学を出て高校に行くとき、父親が遠方に転勤したため、転居先の高校受験に間に合わなかったので、下宿屋さんをやっていた友人の家に3ヶ月だけ住まわせてもらっていたことがあった。

お世話になっておきながら言ってはなんだが、この家の料理には、色々とびっくりした。

味付けも、母のそれとは全く異なった。我が両親は、秋田と新潟という日本海の寒いところ育ちだったので、何でもしょっぱく、甘辛く、味が濃く、が基本だった。それが、この下宿先では、食べ物にほとんど色が付かないほど味がないのである。それを、その家のお母さんが、

「うちは、甘あじ好みだから」

と説明したけど、「え?どこも甘くなんかないけど、甘い味って何??」と、絶句した。「どこかに隠し砂糖でも溶けているの?」と思ってさがしたけど、なかった。

時々、その家のお父さんが「これは甘過ぎるぞ」と、おかずをつき返していたことがあったが、その場合、ほとんど真っ白で、調味料の存在が感じられないのである。それでも「砂糖」などの甘味は全くなかった。甘い、甘過ぎる、って何????と思っているうちに、私の下宿期間は終わった。

辞書で「甘い」をひくと、もちろん、砂糖や蜂蜜のような「甘味」もあるが、「塩気が少ない、辛くない」とも書かれているから、間違った表現ではないことはわかった。しかし、誤解を避けるため、「塩気が少ない」というか「薄い」「薄味」って言って欲しかったなあ。

それから、関西の人が良く言う「からい」にも困る。私にとって「からい」は、唐辛子やわさびのような刺激味を言うのであって、「しょっぱい」は完全に別の味だ。大阪の人たちは、グルメを自称しているけど、「これ、からいわ」なんて言われても、香辛料が効いているのか、塩分が強いのか、判別できない。どうしてこんなに違う2つの意味が、同じ単語で済まされるのかな。「塩辛い」と言われればわかるけど。

 

 

先日、録画していた「NHK俳句」を見ていたら。その日のテーマは「枯れ木」。実名をあげて申し訳ないのだけど、講師の対馬康子さんが、何度も、

「歯が落ちる」

「歯が抜ける」

と発語されるので、私は「???」。

もちろん、先生は「葉が落ちる」「葉が抜ける」とおっしゃっているつもりなのだろうけど、アクセントが完全に「歯」なのである。

それぞれ、歯が抜ける場合は、

 

がぬける

のとおり、冒頭の「は」が高く、葉っぱの場合は、

 

↓は がぬける

 

と我々は(普通)発音する。支那語の4声ほど複雑ではないけど、たった「は」1音でも、発音の仕方は全く違う、と、無意識にやっていることを改めて悟った次第。日本語を習得中の外国人だったら、これは、文字を読んでいるだけでは身につかないことだ。

 

最近、「熱いエネルギー」を「厚いエネルギー」と発音したり(黒木瞳さん、とか)、「厚い」「熱い、暑い」の発音も混同されがちだし、なにかと「アクセント違うよ?」と思う単語があれこれ耳にひっかかる。

アクセントの問題じゃないけど、

「全然大丈夫」「全然いい」「全然OK」

という、「全然」を「否定につながる副詞」ではなく、肯定の副詞(veryと同じ)に使うのが大っ嫌いなのが、最近、無意味な抵抗になってきているようで、悲しい私。

私は意地でも「全然問題ないです」「なんともありません」「何も支障ないです」「OKです」「とても良いです」と言い続けている。