実家からしばらく歩いたところに、個人商店のケーキ屋さんがある。
開業から50年以上過ぎている。これは本当にすごいことだ。
かつて、この通り「松本町商店街」と呼ばれ、個人商店で賑わっていたが、もう、個人商店はわずかになり、それを取り壊したあとが、ワンルームマンション、3階建ての細い一戸建て、または駐車場になって、さびれる一方だ。
ショーケースにあるケーキの種類は、もう本当に数十年間、ずーっと同じ。もう一つのショーケースには、進物用のマドレーヌなんかも置いてあるけど、買って行っている人、いるのかな? いつ焼いたものか、わからない。
今日、久々に通りかかる用があったので、まだご主人、仕事しているんだな、という確認みたいなつもりで、寄ってみた。
ご主人、声を掛けたら、店の奥から出てきた。
かつて一緒に店番をしていた奥さんは、もうずーっと長いこと、姿を見ていない。
以前、私が買いに行ったとき、奥さんは、おつりの計算ができなくなっていた。それが最後に奥さんを見たときだった。
以降、ご主人ひとりでケーキを作り、店番をしている。
今日も、代わり映えしないケーキを買ってきた。
430円、430円、450円の3つなので、内税だろうと思って手元に1310円用意した。
そうしたらご主人、計算した結果、
「1315円です」
と言う。私は「?」と思い、
「5円は、包装代ですか?」
と聞いてみた。包装代はこれまで全く請求されたことがなかったが、方針が変わったのかも、と思った。
そうしたら、
「いや、消費税です」
と答える。
消費税、って、一体・・・・ そもそも、食品のテイクアウトなのだから8%のはず。それに、8%を掛けても、5円という端数は出ないんだが・・・・
と、疑問に思ったけど、奥さんの実例も見ていたので、言い合いをしても無駄だと思い、そのまま1315円払って、店を出た。
もう本当に、明日閉店になってもおかしくないだろう。
誰でも年は取るけど、かなしい。後継者はいなそうだし。